2008年 四国・九州ツーリング  一瞬よりも少しだけ長いあいだ 

 

 阿蘇 大観望 

 

 扉

 「おい、ローホー。お前、今年もまたバイクで野宿の旅にでるのか?」
と口の悪い先輩が言う。
「よい年をしたオヤジのやることじゃないな」
「先輩、今バイクに乗っているのはオヤジばかりなんですよ。キャンプしているのも、登山も、バンド活動も、絵やカメラも、オヤジばかりなんです」
「若い人が少なくなって、昔からやっている人がオヤジになっても続けているから、趣味の世界はオヤジばかりなんですよね」
と後輩がフォローしてくれる。
「そんなものかな」と先輩。「俺にはわからんがな」
 そんなものなのだ。バイクツーリングというすばらしい世界に若者は少なくなり、あまつさえ放浪好きな人間は減っているが、よい年をした私は今年も旅にでる。これを読んでくれているあなたも、冒険のようなキャンプ・ツーリングが好きで、私の旅行記を読もうとしてくれているのでしょう? ならばよい年をした私と、四万十の風に吹かれ、足摺岬から黒潮のながれる海を見て、九州最南端の佐多岬に立とうではないですか。錦江湾にしずむ夕日と噴煙をあげる桜島をながめ、明石海峡と関門海峡をかけぬける一陣の風となって、一瞬よりも少しだけ長いあいだ、放浪に身をまかせようではないですか。

 

9月6日   林さんと再会                      京都、明石海峡、大鳴門橋、四国へ
9月7日   お接待の心                       徳島、剣山スーパー林道、室戸岬、四万十川
9月8日   四万十の川風と足摺岬の黒潮           四万十川、足摺岬、大洲
9月9日   肩の先に水平線                    内子、九州入り、佐賀関、臼杵大仏、原尻の滝
9月10日  流れの悪い日                     豊後大野めぐり、阿蘇、熊本、人吉
9月11日  岬めぐり                         日南海岸、都井岬、佐多岬、錦港湾
9月12日  百聞は一食に如かず                 桜島、霧島神宮、えびの高原、曾木の滝
9月13日  旅する野十郎                      熊本、霊巌洞、柳川、福岡県立美術館、秋吉台
9月14日  見よ 月が我を追う                  足立美術館(島根県安来市)